ホットケーキを綺麗に焼く方法

2014/02: 発行



その2:小さなバーナーではどうなるのか?


前回までのお話
新たな疑問
試験方法
ホットケーキを焼くのに最適な温度とは
小コンロによる加熱試験
考察
 ガスコンロの限界
 フライパンを熱して濡れ布巾で冷やす
ここまでのまとめ
新たな疑問

前回までのあらすじ


我が家でホットケーキを作ると、毎回同じ様に作っているのにも関わらず、なぜか綺麗に焼ける場合とそうでない場合がありました。

それが何に起因するのか長い間不明でしたが、二つのフライパンを使って同時にホットケーキを作り始めた所、フライパンによって出来が異なる事がようやく分かりました。


鉄製フライパン アルミ製フライパン

具体的には、アルミ製のフライパンを使うときれに焼けるのに対して、鉄製のフライパンを使うとどうしても焦げてしまうのです。

さらにその理由を調べてみようと1台数百万円もするサーモビュア(エリア温度測定器)を使って調べた所、興味深い事が分かりました。

何と鉄製フライパンはバーナーの火が当たった中央部だけが局部的に温度が高くなるのに対して、アルミ製の場合熱伝導率が高いため、フライパン全体が温められ過度に中央部の温度が上昇しないのです。

アルミ製         鉄製

すなわち同じバーナーで熱しても、アルミ製より鉄製のフライパンの方が100℃以上温度が高くなってしまうのです。

これでは焦げる筈です。

という訳で、前回の結論は、ホットケーキをおいしく焼くにはアルミのフライパンを使うでした。


新たな疑問


上記の様に、取り敢えずアルミのフライパンを使えばホットケーキは綺麗に焼けるのですが、新たな疑問が湧いてきました。

何かと言えば、当然ながらホットケーキを焼くのはフライパンの中央部分ですので、熱効率を考えればフライパン全体を温めるアルミ製は無駄が多く、むしろ中央部だけが熱くなる鉄製フライパンの方が効率が良いと言えます。

となると、鉄製のフライパンを、もっと小さな熱源(より小さなコンロ)で熱すれば、焦げないでなお且つ省エネでホットケーキが作れる事になります。

はてさて、この考えは正しいでしょうか?

という訳で、1年ぶりに追加の試験を実施しました。


試験方法


前記しました小さな熱源ですが、我が家のガスコンロには大きさの異なる三つのバーナーがあり、今までは手前側の大と中を使って実験をしていました。

    

となると一番小さなバーナーを使って鉄製のフライパンを熱すれば、フライパンの中央部だけホットケーキに最適な150℃前後にできるかもしれません。

それぞれのバーナーの直径を調べると、80mm/65mm/50mmです。

バーナーの火力はバーナーの大きさ(すなわち直径)にほぼ比例すると思われます。

という事は、65mmバーナーの火力を100%とすると、それぞれの火力は123%/100%/77%となります。

小のバーナーの火力は、中のバーナーと比べると23%しか小さくなりません。

できれば半分以下にして試験したい所ですが、はたしてどうなるでしょうか?

ホットケーキを焼くのに最適な温度とは


さて、早速試験を開始する前に、やりたい事があります。

前回サーモビュアでフライパンの温度画像を採取したのですが、生憎フライパンの表面温度を細かく数値で測定していませんでした。

このためホットケーキが綺麗に焼けた時と、焦げた時のフライパンの表面温度が分かりませんでした。

という訳で今回は、再現試験を兼ねて、サーモビュアの画面に温度測定ポイントを表示させ、前回と同様に同じアルミ製と鉄製フライパンを熱してみます。


左がアルミ製    右が鉄製


加熱直後のフライパン温度


加熱1分後


加熱2分後

上記写真をご覧頂きます様に、アルミのフライパンは加熱2分後にまだ100℃以下でありながら、鉄製フライパン中央部の最高温度は既に280℃にも達しています。

なおバーナーの大きさによる影響を考慮して、フライパンが冷めた後、フライパンを左右に乗せ替えてみましたが(以下の写真参照)、やはり同じ傾向を示します。


加熱1分後


加熱5分後

ただし上段の写真と見比べると、右のバーナーの方が多少火力が強い事が分かります。

この測定値より、ホットケーキを綺麗に焼くには、150℃前後が丁度良く、200℃以上では温度が高過ぎで、250℃以上になると間違いなく焦げると思った方が良さそうです。

そしてもう一つ分かった事があります。

鉄製のフライパンの場合、コンロを点火してから1分後には150℃以上に達しますので、この前にホットケーキの生地を流せば、焦がさずに焼ける可能性があります。

これは今後確認していこうと思います。


小コンロによる加熱試験


以上が分かった所で、いよいよ本番です。

二つのフライパンの温度が下がった所で、鉄製のフライパンを一番小さなコンロに掛け、比較用にアルミのフライパンを一番大きなコンロに掛けて、いつもの様に一番弱火で加熱してみます。

   

さあ、どうなったでしょう。


加熱1分後


加熱2分後

上記写真の様に、見事失敗です。

すなわち、小バーナーで熱すれば鉄製フライパンでもそれほど温度は上がらないと予想していたのですが、鉄製フライパンはあっという間に(2分ほどで)272℃に達してしまいました。

ためしにこの状態でホットケーキを焼いてみた所、やはり焦げてしまいました。

   

この焼き具合からしても、フライパンの丁度良い温度は150~180℃前後で、200℃を超えると要注意です。




考察


今回の試験は予想通りにいかなかったものの、かなりの事が分かってきました。

【ガスコンロの限界】

上記試験において、鉄製フライパンの最高温度は以下の様になっています。

大バーナー:280℃
中バーナー:278℃
小バーナー:272℃

これから言える事は、鉄のフライパンを使う限り、どんなにガスコンロの火力を弱めても表面温度が高くなりホットケーキ作りには適さないと言えます。

そしてもう一つ言える事は、僅かな差ではありながら、バーナーの大きさで最高温度が変わっているという事です。

すなわち、コンロが小さければそれなりにフライパンの表面温度も低くなっています。

という事は、ガスコンロよりもっと火力の弱いコンロ(例えばホットプレート)を使えば、鉄製のフライパンでもホットケーキを綺麗に焼く150℃近辺にする事が可能という事を示唆しています。

【フライパンを熱して濡れ布巾で冷やす】

上記試験結果から、もう一つ分かった事があります。

良く言われる、フライパンを熱してから、濡れ布巾で冷やす。

これほど無駄な事はないと思っていたのですが、ようやくその理由が分かってきました。

恐らくこれは、ガスコンロと鉄製フライパンの組み合わせにおいて見出された手法ではないかと思います。

すなわち、鉄製フライパンをガスコンロで加熱すると、どんなに弱火にしていても一気に200℃以上になってしまうため、ホットケーキを流し込む直前に、止むなく濡れ布巾で温度を下げようという訳です。

恐らくホットケーキを流し込んだ後は、ホットケーキがどんどん熱を奪うので、ホットケーキが接触するフライパンの温度は200℃を超えないのだと思われます。

これもいつか、裏付け試験をやりたいと思います。


ここまでのまとめ


さて、これまでのまとめです。

①ホットケーキを焼くのに最適な温度は、150℃前後であり、200℃以上では要注意である。

②ホットケーキをガスコンロで焼くのならば、弱火で温度が200℃以上にならないアルミ製フライパンが断然お勧めである。

         

③ホットプレートの様に火力が微調整できる場合は、底部だけが熱くなる鉄製フライパンが熱効率から言って優れている。

④フライパンを熱してから、一度濡れ布巾で冷やすという儀式は、ガスコンロ+鉄製フライパンの組み合わせにおいて有効である。


新たな疑問


今回は厚さ2mmの鉄製フライパンを使いましたが、次回は別の厚みの鉄製フライパンではどうなるかをも試してみたいと思います。

という訳で、またいつか覗いてみて頂ければ幸甚です。




その2:小さなバーナーではどうなるのか?
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