俄(にわ)かラグビーファンに捧げる
3分で分かるラグビーのルール

2019/9:発行
2019/10:更新



1. はじめに


ラグビーワールドカップが日本で開催されるとあって、ビール片手に日本チームでも応援してみようかと思われる方は少なからずいらっしゃる事でしょう。



とは言いながら、ラグビーの試合をじっくり見ても、走ったり潰されたりホイッスルの連続で、何をやっているのか今一つ良く分かりません。

おまけにどこが見所かもさっぱり分かりません。

そんな貴方に、分かり難いと言われているラグビーのルールを、たた3分でお教えしたいと思います。

これさえ読めば、ラグビーの醍醐味を十分楽しめますので、騙されたと思ってお付き合い頂ければ幸いです。


なぜラグビーのルールは分かり難いのか


と言いながら、本題に入る前に、先ずお伝えしたい事があります。

それは、なぜラグビーのルールが分かり難いかです。

一つには、安全性を確保するため細かいルールが増えた事もあるでしょうし、ある程度得点が入る様にするためにルールが改定されてきたとの経緯もあるでしょう。

ですが最大の問題は、ラグビーに使われている用語(ブリティッシュ英語)が、北米英語に慣れ親しんだ日本人にとって分かり難いからではないでしょうか。

例えば、ノックオンだのラックだのモールだのスローフォワードだのコンバージョンキックだのと、アナウンサーから次々に言われても、何の事だかさっぱり分かりません。

そんな訳で、本書ではそんな正式名称は完全に無視して、小学生でも分かる言葉で解説していきます事ご容赦願います。


ラグビーの流れと定形パターン


それではいよいよ本題です。

一般的な解説書でしたら、1チーム15人だの、前後半40分ハーフだの、ボールを抱えて相手陣地の背後にボールを置けば得点だの、前にパスしてはいけないだの、という話から始まるのでしょうが、本書は違います。

先ずお伝えしたいのは、ラグビーの流れと基本となる8つの定形パターンです。

これさえ知ってしまえば、ラグビーのルールは分かったも同然です。

という訳で、いきなりの試合開始です。

1. キックオフ

事前にじゃんけん等で勝ったチームが、相手チームの陣地にボールを蹴ります。


キックオフと同時にボールを敵陣に蹴り上げる(赤矢印の先がボール)

もし味方チームに渡したければ、なるべく高く蹴り上げて、味方チームがボールの落下地点に間に合う様にします。

ですがゲームも中盤になると選手達も疲れてくるので、相手陣地に大きく蹴り入れる事が多くなるのは、ここだけの秘密です。


2. 攻撃

そのボールを味方にしろ敵にしろ、キャッチしたチームが敵陣めがけて攻め込みます。


ボールをキャッチしたチームが敵陣に向かって攻撃を開始する

この場合、ボールを抱えて走っても良いですし、味方にパスしても、キックしても構いません。

ただし既にご存知の様に、パスだけは前方にしてはいけません。


3. 潰される

そうは言っても相手のある事ですので、そう簡単に敵陣奥まで切り込めません。

どこかで、相手チームのタックルを受けて潰されます。


ボールを持っている選手にタックルして侵攻を阻止する

そうなったら、味方が来るまで必死でボールを抱えていたくなるのですが、それではラグビーと言う名のおしくらまんじゅうになってしまうので、潰されて地面に着いたら、ボールを離さなければいけません。

そこでこぼれ落ちたボールをゲットして、新たな攻撃の開始です。

なおテレビを見ていると、団子状態の横や後ろからボールを抜き取れば良いのにと思われるかもしれませんが、混戦に参加できるのはボールの後ろ側からだけとのルール(オフサイド)があるので、それはできません。

上の写真においても、団子状態に加勢するメンバーは、全てボールの後ろ側から迫っているのが分かります。

オフサイドとは

ラグビーの解説でしばしば聞くオフサイドですが、一言で説明すればボールより前がオフサイド(敵陣側)と思えば大きな間違いではありません。


白いパンツチームにとって、左側がオンサイドで右側がオフサイド

ですからもしアナウンサーが、”今オフサイドがありました”と言ったら、ボールより前(敵陣エリア)にいる味方の選手が、ウッカリ何かやっちまった(プレイに影響を与えてしまった)という事です。

ですのでラグビーに参加するには、味方の選手は常にボールより後ろに居なければならないのです。

このため上の写真の様に、潰されている選手以外の味方の選手は、全てボールより後ろ側に居るのが分かります。

ちなみにこのボールの後ろ側をオンサイド(自陣側)と言います。


4. キックバック

攻撃とタックルを繰り返しながら敵陣に攻め込んでいく訳ですが、ここで一気に大味なプレーが出現します。

それがキックバックです。

ボールが自陣の奥まで来たら、リスクを減らすために敵陣に向けて大きくボールを蹴り返す事があります。


自陣奥まで侵入してきたボールを蹴り返す

ラグビーの場合、ボールより敵陣側にいる選手はプレイしていけないルール(オフサイド)がありますので、当然ボールは相手チームに渡ってしまいます。

さらにそのボールを拾った相手チームが、またまた(選手達の頭上を越えて)敵陣に蹴り返したりしたら、かなり興ざめなのは間違いありません。

ただし、この時間を使って選手達はこっそり休んでいると思って、許してあげましょう。

またこのキックバックの回数で、どちらがどれだけ疲れているか推し量る事が可能です。

なお上記の様に相手の陣地に蹴り返す場合でしたら、手に持ったボールをダイレクトに蹴っても良いのですが、ボールを蹴って直接ゴールを狙う場合は、一度地面にバウンドさせてから蹴る(ドロップキック)必要があります。


5. スローイング

スローイング(正式名はラインアウト)はサッカーと同じで、ボールがサイドライン(正式名はタッチライン)を超えた場合に行います。


スローイングの瞬間

ただしサッカーと違って手を使ってボールをキャッチできますので、選手を担ぎ上げたりしてボールを空中で奪い合います。


6. スクラム

これはご存知でしょう。

キャッチしたボールを前に落としたり(ノックオン)、パスを前方にしてしまった(スローフォワード)場合、更にはタックルで潰されて膠着状態になった場合、その場所からスクラムを組んでゲームを再開します。


バックスの16人のショータイムであるスクラム

このスクラムですが、たまたまボールの近くにいた選手が適当に集まってやっている様に見えますが、実はビリヤードの置き玉の様に形状も選手の位置も予めしっかり決まっているのです。


スクラムを組むフォワードメンバーの位置は決まっている

それはともかく、ボールを落としたくらいで、何でこんな面倒な儀式をいちいちやるのかと思われるかもしれませんが、実はこれこそラグビーの醍醐味なのです。

なにしろ、防具を一切身に付けない敵味方総勢16人もの屈強な男達が、ガップリ四つに組んで押し合うスポーツはラグビーだけなのです。

さらにテレビでは余り伝わらないかもしれませんが、その16人がぶつかり合った瞬間(審判がセットと宣言した瞬間)は、ウッという唸(うな)り声と共に肉と骨とがぶつかり合うドスッという鈍い音が響き渡るのです。

相撲もぶつかり合う瞬間バシッと破裂音がしますが、その8倍もの力がぶつかり合うと言えば、その音の迫力と衝撃の強さを分かって頂けるのではないでしょうか。

鈍足巨体フォワード16人のアドレナリンが噴き出すこの瞬間こそ、本書お勧めのラグビー最大の見所です。

くどい様ですが、あらゆるスポーツの中で、これだけの巨体と人数がぶつかり合う競技は他に無いのですから。

特に相手の力量を測る初っ端(しょっぱな)のスクラムと、ゴールライン近くでのスクラムは更に迫力があります。

おっともう一つ、秘密の見所をお教えしましょう。

テレビにはまず映らないでしょうが、スクラムが解除された後の男たちの表情です。

恐らく本人達も気付いていないでしょうが、全力を出し切った後の得も言われぬ恍惚の表情を浮かべています。


7. トライ

これは何方もご存知でしょう。

前述のパタン2~6を繰り返しながら、徐々に敵陣に攻め込んで、最後に敵陣の後ろにボールを接地させれば5点ゲットです。


トライの瞬間(接地の瞬間ボールを離してはいけない)

先ほどお伝えしたスクラムがフォワード最大の見所だとしたら、トライこそがバックス最大の見せ場と言えるでしょう。


8. ゴールキック

トライを決めると、おまけのゴールキック権(コンバージョン)が漏れなくプレゼントされます。


ゴールキックが入ると2点貰える

ただしこのゴールキックは、トライをした場所からサイドラインに平行に伸ばしたライン上で蹴らなければなりません。

ですので、トライした場所がサイドラインぎりぎりの場合、上の写真の様にフィールドのかなり端の方からボールを蹴って、2本のゴールポストの間を通過させなければなりません。

テレビを見れると、やたらにゴールラインの中央部めがけてトライしたがっているのはこのためです。

ところで 昨今このゴールキックのシーンがラグビーの見せ場の一つの様に思われていますが、(何しろ1選手が全テレビカメラを独占して、決めれば2点も貰えるのですから)、本書は異なります。

何故ならば、静止しているボールを誰の邪魔もなく、じっくり集中して自分のタイミングで蹴れるので、余程の強風でも吹かない限り高校生でも楽に入れられるからです。

ですので本書としては、長々とルーティンと呼ばれる儀式をする事なく、ボールを置いたら速やかに蹴って、何事もなくゴールを決める選手こそ称賛されるべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

なお相手チームが重大な反則を犯した場合も、同じ様にゴールキック(ペナルティーキック)を行い、成功すれば3点ゲットできます。


まとめ


いかがでしたでしょうか。

正式名称さえ使わなければ、ラグビーもかなり単純で簡単なスポーツである事をご理解頂けたのではないでしょうか。

そして、既にお伝えした下記8つの基本定形パタンと試合の流れを知って頂ければ、テレビを見ながら30人のラガーマンと一緒に一喜一憂できるものと確信しております

1. キックオフ
2. 攻撃
3. 潰される
4. キックバック
5. スローイング
6. スクラム
7. トライ
8. ゴールキック

そして最後のおまけとしまして、”はじめに”でお伝えしました正式名称の意味をお伝えしておきます。

名称 意味
ノックオン 捕球ミス(反則)
ラック 団子状態
モール 立った状態での団子状態
スローフォワード 前方パス(反則)
コンバージョンキック トライ後のおまけのゴールキック

凡そのルールが分かった後に聞けば、かなり理解し易いのではないでしょうか?

おっと、最後にもう一言。

ラグビーの休憩時間は10分以上もあります。

その間テレビを点けていると、永遠にCMを見続ける事になりますので、ご注意を。




3分で分かるラグビーのルール




ご意見、ご感想等ありましたら是非こちらに。
Your response would be highly appreciated.





ホーム頁へ戻る