事実と真実の違い
2019/12/12:発行
はじめに
事実と真実の違いは何でしょうか?
人それぞれ思いは異なるのでしょうが、誠に僭越ながら本サイトが思う両者の違いを述べてみたいと思います。
もしかしたら何かのヒントになるかもしれませんので、最後までお読み頂ければ幸甚です。
結論
長々と読むのは面倒な方に、先に本書の結論をお伝えしたいと思います。
説明は後ほど行うとして、本書の考える事実と真実の違いを図にすると以下の様になります。
いかがでしょうか?
何となく、本書の思いが伝わりますでしょうか?
広辞苑
さて、困ったときの神頼み、ならぬ辞書頼み。
最近でしたら、困ったときのネット頼みなのでしょうが、やはり昔から慣れ親しんだ辞書は、信頼性の高さでは群を抜きます。
という訳で、早速広辞苑で事実と真実を調べてみましょう。
すると両者はそれぞれ、以下の様に書かれています。
事実
①[史記荘子伝]事の真実。真実の事柄。本当にあった事柄。「―関係」「―を曲げる」「―上の支配人」
②〔哲〕(factum ラテン・fact イギリス)本来、神によってなされたことを意味し、時間・空間内に見出される実在的な出来事または存在。実在的なものであるから幻想・虚構・可能性と対立し、すでに在るものとして当為的なものと対立し、個体的・経験的なものであるから論理的必然性はなく、その反対を考えても矛盾しない。
③(副詞的に)ほんとうに。じっさい。「―僕は何もしゃべっていない」
真実
①うそいつわりでない、本当のこと。まこと。今昔物語集5「若し―の言ことを致さば我が身本の如く平復すべし」。「―を語る」
②(副詞的に)ほんとうに。全く。「―驚いた」
③〔仏〕仮かりでないこと。究極のもの。絶対の真理。真如。
上の一部を抜き出すと、以下の様になります。
事実:事の真実。真実の事柄。本当にあった事柄。
真実:うそいつわりでない、本当のこと。まこと。
真実:うそいつわりでない、本当のこと。まこと。
これによれば、事実=”事の真実”、あるいは事実=”真実の事柄”ですので、どうも事実より真実の方が上位概念の様に思われます。
すなわち、以下と言えます。
真実>事実
ここまでは大多数の方も同じ認識ではないでしょうか。
Fact(事実)とTruth(真実)
続いては国際語と言っても良い、英語も見てきましょう。
英英辞書によれば、Fact(事実)とTruth(真実)は以下の様に書かれています。
Fact
1. A thing that is known or proved to be true.
‘he ignores some historical and economic facts’
‘the most commonly known fact about hedgehogs is that they have fleas’
[mass noun] ‘a body of fact’
1.1(facts) Information used as evidence or as part of a report or news article.
‘even the most inventive journalism peters out without facts, and in this case there were no facts’
1.2Law [mass noun] The truth about events as opposed to interpretation.
‘there was a question of fact as to whether they had received the letter’
Truth
1. The quality or state of being true.
‘he had to accept the truth of her accusation’
1.1(also the truth) That which is true or in accordance with fact or reality.
‘tell me the truth’
‘she found out the truth about him’
1.2[count noun] A fact or belief that is accepted as true.
‘the emergence of scientific truths’
‘the fundamental truths about mankind’
これまた例文を放っておいて主要な個所を抜き出すと、以下の様になります。
Fact:A thing that is known or proved to be true.
事実:知られている、もしくは真実であることが証明されているもの。
Truth:A fact or belief that is accepted as true.
真実:真実として受け入れられている事実または信念。
事実:知られている、もしくは真実であることが証明されているもの。
Truth:A fact or belief that is accepted as true.
真実:真実として受け入れられている事実または信念。
これらからしても、日本語と同じくFact(事実)よりTruth(真実)の方が上位の概念であると思われます。
事実より真実の方が真に近い
という訳で、最初にお見せした絵を再度見て頂きたいと思います。
ご覧の通り、これは真と偽の間における、真実と事実の相対的な位置関係を示しています。
既にお伝えしました様に、事実より真実の方がより真に近いという事でこの様に描いていますが、ここまでは特にご異論は無いでしょう。
そしてもう一つこの絵でお伝えしたいのは、青い三角形です。
三角形の頂点に位置する真の幅は小さいのに対して、偽の幅は大きくなっています。
これが何を表すかと言えば、真は唯一無二であるのに対して、偽はそれこそ無数に存在しているという事です。
これについても、恐らく同意して頂けるだろうという事にして次に進みます。
事実は一つではない
さて、この絵の意味をご理解頂けた所で、本書がどうしてもお伝えしたい事が3点あります。
先ず1点目が、事実は複数存在するという事です。
例えばですが、(余り現実的な話ではありませんが)正面は赤くて背面が青い服を着た女性が歩いていたとします。
そうしますと、前からその女性を見た人は、赤い服を着ていたと言うでしょうし、後ろからその女性を見た人は、青い服を着ていたと言うでしょう。
両者の主張は全く異なるにも関わらず、どちらも間違いなく事実です。
すなわち、事実は無数とまでは言わないまでも、複数存在するのです。
より真に近い事実が真実
そして、お伝えしたい事の2点目が、複数ある事実の内、より真に近いものを真実と扱うべきだという事です。
先ほどの例でしたら、もし正面は赤で背面が青の服を着ていたという人がいたとしたら、その主張がより真に近いので、真実と言えます。
すなわち、声の大きさとか多数決とか自分にとって都合が良い悪いではなく、より合理的で矛盾のない事実を真実と扱うべきだという事です。
真は誰にも分からない、でも近づく事はできる
そして最後にどうしてもお伝えしたいのが、これです。
真は誰にも分からないという事です。
先ほどの例でお話すると、正面は赤で背面は青い服を着ていたのは、実は男性だった可能性もあります。
また正面は赤で背面は青い服で、更に横は黄色が入っていたかもしれません。
いずれにしろ、例えそれが真実だと思われても、絶対的な真は誰にも分からないという事です。
だからと言って、真を手に入れる事を諦めろと言っている訳ではありません。
最も重要なのは、真を手に入れる事ができないものの、真に近づく事はできるという事です。
この一言をどうしても伝えたくで本書を書いてみたのですが、思いは伝わりますでしょうか?
まとめ
さてまとめです。
①事実と真実の違いは、複数ある事実において、最も真に近いものを真実と呼ぶ。
②ただし真実=真ではない。
③とは言え、限りなく真に近づく事はできる。
この結論が100%正しいとは夢にも思っていないものの、かなり真に近いと思うのですが、いかがでしょうか。
事実と真実の違い