10分で分かるアメリカンフットボールのルール
1. はじめに
面白そうなのだけど、日本では今一つ馴染みの薄くて盛り上がらないアメリカンフットボール。
アメフトのボールを模したテキサスにあるAT&Tスタジアム
ところが彼(か)の地アメリカでは、下のチャートにあります様に野球やバスケットを凌ぐ人気スポーツというよりも、他と比べるのも憚(はばか)られる様な超弩級の人気スポーツなのです。
Most popular sports in the U.S. 2017
そして、毎年2月上旬の日曜日に開催されるスーパーボウルは、全米挙げての一大イベントになっています。
生憎日本では、それに匹敵する規模のスポーツイベントは存在しないのですが、全米で視聴率が45%を超える事を考えれば、紅白歌合戦のスポーツ版と言えば凡(おおよ)そその国民的な盛り上がりをお察し頂けるのではないでしょうか?
何しろテレビの視聴率は間違いなく年間第一位で、そこで放映されるCMはスーパーボウル専用で、そのCMが翌日のニュースになる程なのですから。
となったら、今の内にアメリカンフットボールのルールでも知って、一丁応援してみようかと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな貴方に、10分で分かるアメリカンフットボールのルールを作ってみましたので、ぜひご利用頂ければと思います。
ラグビーの問題点
さて、普通の解説書でしたら、競技場の大きさや選手の数、あるいは試合時間の説明から入るのでしょうが本書は違います。
いかにしたらアメリカンフットボールに興味を持って頂けるか熟考に熟考を重ねた結果、アメリカンフットボールの元になったラグビーとの違いから述べた方が分かり易いとの結論に至りました。
という訳で、(ラグビーファンの方には甚だ申し訳ないのですが)先ずはラグビーのつまらない点(問題点)をお伝えし、それに対してアメリカンフットボールがどうルールを変更したのかについてお知らせしたいと思います。
ご存知の様にラグビーは、サッカー同様メイドイン英国で、紳士のスポーツの代名詞と言っても良い程フォーマルでジェントルなスポーツです。
ですので、ボールを前に投げてはいけないだの、ボールより前でプレーしてはいけないだの、団子状態(正確にはラックとモール)になったら横からボールを奪ってはいけないだの、まどろっこしいルールが山の様にあります。
ですので、試合を見ていると、パスをつないで走る所はスピード感があって良いのですが、タックルされた途端にボールが全く見えない混戦(団子)状態に突入します。
見ていて全く面白くないラグビーの混戦(Ruck & Maul)状態
それが数回だったらともかく、頻繁に繰り返されると次第に応援する気力を失ってしまいます。
おまけに、この混戦状態から素早くボールが出てくれれば良いのですが、そうではないと毎度お馴染みのホイッスルが試合会場全体に鳴り響きます。
数えた事はありませんが、一試合にホイッスルの鳴る回数は数あるスポーツの中でラグビーが断トツの多さではないでしょうか。
その結果、フォワードメンバー最大の見せ場であるスクラムの儀式が数分間行なわれます。
ラグビーのスクラムは必ず崩れる
そのスクラムも真っ直ぐに押し合ってくれるのなら良いのですが、結局押され気味の方はバランスを崩し、スクラムはあらぬ方向にどんどん曲がっていきます。
混戦状態にこのスクラムの時間を含めると、ラグビーの試合時間の大半はこのスピード感の無い押し合いへし合いの団子状態ではないかと思ってしまう程です。
それじゃーあんまり面白くないので、もっと攻撃的でスピード感が持続して、更に戦術を盛り込める様にできないかと、工夫に工夫を重ねられたのがアメリカンフットボールという訳です。
そう聞くと、俄然アメリカンフットボールに興味を待たれるのではないでしょうか。
団子状態を排除したアメリカンフットボール
それでは、ラグビーをよりアグレッシブにするためにアメリカンフットボールはどうルールを変更したのでしょう。
簡単です。
ラックだのモールだのと呼ばれる細かいルール満載の混戦状態を、ゲームから一掃してしまったのです。
具体的には、もしタックルされて潰されたら、(団子状態にならずに)その場から再度フォーメーションを組んで攻撃を再開する様にルールを変更したのです。
タックルされて潰されたら、その場から再度フォーメーションを組んで再開する
これによってつまらない団子状態を見る事もなく、更にフィールド上では攻撃開始毎に数百種類ある攻撃パタンを駆使して攻める事が可能になったのです。
そして防御側も、当然ながら数百種類の守備パタンを準備して相手を待ち受ける事ができるのです。
これで面白くない訳がありません。
とは言え、それではボールを奪われない限り、片方のチームが永遠に攻撃を続けられますので、攻撃権は4回までとされています。
そして、この4回の攻撃の間に9.1m(10ヤード)進めれば、その時点から再度4回の攻撃権が貰え、もし進めなければ攻撃権は相手に移るという訳です。
これでアメリカンフットボールのルールの大半を、ご理解頂けた事になります。
1回だけボールを前方に投げられる
そしてもう一つラグビーとの大きな違いは、この4回の攻撃の内に1回だけ、ボールを前方に投げられる事です。
ご存知の様にラグビーは、ボールを前に投げてはいけないものの、ボールを前方に蹴る事は許されています。
ただし当然ながら投げるの蹴るのとでは、明らかにボールの制御精度が異なりますので、ボールを蹴って味方にパスするのはかなりのギャンブルと言えます。
それに対して1回だけとは言え、前方にいる味方に対してボールを投げられるのですから、攻撃の精度と威力は一気に増します。
何しろこれが成功すれば、一気に数十ヤードの前進どころから、見方がエンドゾーンでボールをキャッチすればそのままタッチダウン(得点)になるのですから。
一発逆転を狙った前方へのロングパスはアメリカンフットボール最大の見せ場
特に試合後半の一発逆転を狙ったロングパスは、アメリカンフットボール最大の見せ場と言えるのではないでしょうか。
ボールを持っていない相手をブロックできる
前方へのロングパスがアメリカンフットボールの華ならば、ボール抱えて走るランニングはアメリカンフットボールの蝶と言えるのではないでしょうか。
実際ボールを抱えた走者が、相手のタックルを華麗にかわしながら一気に突進する姿はほれぼれします。
ですが、ここにもアメリカンフットボール特有のルールが存在するのです。
ラグビーの場合、どんなに足の速い選手でも、どんなに突進力のある選手でも、ランニングだけで敵を掻き分けながら数メートル進むのは至難の業です。
ところがアメリカンフットボールの場合、ランニングだけで平気で数十メートル進む事が可能です。
この理由は、ラグビーの場合ボールより前の選手はプレーに加わっていけないというルール(オフサイド)があるのに対して、アメリカンフットボールの場合はボールより前の選手でも相手をブロックして良いからです。
敵をブロックしてボールを持った走者(赤丸)の道を確保する
すなわちアメリカンフットボールの場合、ボールを持っている選手に襲い掛かかろうとする敵を、味方の選手がブロックして、ランニング用のスペースを確保する事が可能なのです。
これによってランニングで進める距離が、ラグビーより一気に増えるという訳です。
これで益々アメリカンフットボールを応援してみたくなってきたのではないでしょうか?
選手交代制限無し+プロテクター装着可能
さてここまで聞くと、アメリカンフットボールのルールはラグビーと比べてかなりアグレッシブに変更されたのが分かって頂けたと思います。
ですので、選手の疲労度はラグビーの比ではありませんし、身体に受ける衝撃も明らかにラグビーより上です。
そんな訳でアメリカンフットボールの場合、選手交代は無制限に行なえる事になっています。
ですのでラグビーの場合、ゲーム後半になると明らかに選手達の疲れを見て取れるのですが、アメリカンフットボールでしたらゲーム全般を通して全選手が全力疾走する豪快なプレーを楽しめるのです。
また選手がプロテクターを付ける事も許されていますので、その分タックルも強烈に行える事になります。
ご存知かもしれませんが、ラグビーの場合はプロテクターの装着は禁止されており、サポーターであっても洗濯できるものという条件が付いている程です。
ところでアメリカンフットボールの代名詞とも言えるヘルメットですが、これもアメリカンフットボール人気を盛り上げる材料の一つではないでしょうか?
アメリカンフットボールの代表アイコンとも言えるヘルメット
なにしろ一度これを被(かぶ)れば、誰もがスーパースターに見えるから不思議です。
ハーフタイムショー
そして最後にお伝えしたいのが、ハーフタイムショーです。
有名なのは当然ながら毎年2月初旬に行われるスーパーボウルのハーフタイムショーですが、それ以外の試合でもチアリーダーやマーチングバンドによるハーフタイムショーが行われます。
伝説となった1993年のハーフタイムショー
さすがにUSAで一番人気を確立しているスポーツだけあって、エンターテインメント性も磨きが掛かっています。
その他
さてラグビーと比べながら、大所のルールをご説明しましたので、ここで細かいルールをやはりラグビーと比べながらご説明したいと思います。
項目 | ラグビー | アメリカンフットボール |
競技場 | 100m×70m | 91.5m x 48.8m |
試合時間 | 40分×2 | 15分×4 |
プレー人数 | 15人 | 11人 |
選手交替 | 8人まで | 制限なし |
ボールの色 | 白系 | 茶系 |
オフサイドルール | 有り | 無し |
ゴールポスト | 2本脚 | 1本脚 |
得点 | トライ 5点 | タッチダウン 6点 |
おまけキック 2点 | おまけのキック 1点 | |
ペナルティキック 3点 | フィールドゴール 3点 |
上の表をご覧頂ければ細かい説明は不要かもしれませんが、多少補足すると以下の様になります。
まず競技場のサイズですが、アメリカンフットボールの競技場は、ラグビーやサッカーより細長くなっています。
アメリカンフットボールの競技場は、ラグビーやサッカーより細長い
これによって、選手が横方向に広がらず縦方向の攻撃に集中できるのと、ラグビーのより少ない人数で対応できます。
ただしそれはフィールド上だけの話です。
アメリカンフットボールの場合、選手交代は無制限にできるとお伝えしましたが、更に一試合に出場できる選手は全部で45人もいるのです。
45人という事は、一度にプレーできる人数が11人ですので、何と4チーム(45÷11)分の選手が何度も出場可能なのです。
すなわち、ラグビーの場合は1チーム+8名(交代要員)しか出場できないのに対して、アメリカンフットボールの場合は何と4チーム分のメンバーが休みを取りながら交互に出場できるのです。
そりゃ疲れ知らずの筈です。
今までアメリカンフットボールにおけるラグビーとの相違点をいくつか述べてきましたが、これこそがラグビーや他のスポーツとの最大の違いと言っても良いでしょう。
さすが物量至上主義のアメリカです。
また試合時間は、アメリカ人が何故か大好きなクオーター(4分の1)制を採用しており、15分ゲームを4回行います。
これもCM時間を考慮しての事でしょう。
まとめ
さてここまで読んで頂ければ、アメリカンフットボールを十分楽しんで頂けるものと確信しております。
それではまとめです。
①アメリカンフットボールは、ラグビーを更にアクティブにし、且つエンターテインメント性を高めた競技である。
②このためアメリカンフットボールは、タックルされた後の混戦を排除し、タックルで潰されたら、その場からフォーメンションを組んで再度攻撃を行う。
③ただしこの攻撃は4回までとし、もし4回の攻撃の間に9m(10フィート)進めなければ、攻撃権は相手に移る。
④更にアメリカンフットボールは、4回の攻撃の間に1回だけ前方に投げても良いので、よりアグレッシブな攻撃が可能となる。
⑤またボールを抱えたランニングでより前進できる様に、味方の選手が相手の選手をブロックする事も可能である。
⑥これらに伴い運動量が大幅に増え、身体へのストレスも高まる事から、選手交代には制限は無く、プロテクターの装着も可能である。
⑦アメリカンフットボールと他のスポーツとの最大の違いは、一度にプレーできる人数の4倍もの選手が入れ替わり立ち代わり出場できる事で、これによって疲れ知らずのプレーを堪能できる。
こんなまとめで宜しいでしょうか。
10分で分かるアメリカンフットボールのルール